My lovely person

05


集まりが始まる15分前に征鷽(せいがく)の船が跡部グループの所持する港に到着した。現在、この港は集まりのた
めに閉鎖されているので、堂々と入港できたのだった。跡部景吾の別荘は港から5分もかからないところにあるため
15分前でも余裕があった。

「集合!」
船が港に着くと、手塚は船員に集合をかけたが、全部で8人いるはずなのに、集合したのはたった5人だった。
「不二と菊丸とリョーマはどうした?」
残りの3人とは不二と菊丸とリョーマだった。
「不二と英二はリョーマを手伝ってから来るそうだ。」
大石が3人が遅れている理由を言ったときに菊丸の大声が聞こえてきた。
「おーい!遅くなってごめん〜!!」
その大声に6人が振り向いたとたん全員固まってしまった。
「どう?リョーマ綺麗でしょ?」
「俺たち2人でがんばったんだからな!」
そんな2人の声も固まっている男たちには届かなかった。6人の視線の先には不二の後ろに少し隠れるように立って
少しうつむいているリョーマがいた。
[ねぇ、周助。やっぱり変だよ。]
そう言ったリョーマの格好は、赤色のドレスで腰から下に斜めに布を3枚重ねており、1番上と3番目が同じ色で2番目
と最後が同じ色をしていた。腰から上はキャミソールのような感じで体のラインがでるようになっていおり、上と下はひ
っついていてドレスのいたるところにドレスと同じ色のラメが施されていて、ドレスの端になるようなところと肩のところ
は金色のラメで縁取られていた。(布が重ねられているところの端も)そして、二の腕から先は手袋をしていて、首に
は2重になっているネックレスをし、少し垂れ下がっているイヤリングをしていた。髪は黒のロングの鬘をつけていて、
それを全部まとめて頭の1番高いところで少し左がわに結び、いわゆるポニーテールのようにしていて、根元にはドレ
スと同じようないろの髪飾りをつけ垂れているところを巻いており、顔には少し化粧が施されていた。
「何言ってんのさ!こんなにかわいいのに!」
「そうそう!すっごくかわいいって!」
菊丸はリョーマと一緒にいるうちに口ぱくでも大体リョーマの言っていることがわかるようになったのだ。
[そうかな?]
「そうだよ。だから自信持っていいんだよ。」
「あそこの6人はおちびがあまりにも綺麗だからビックリしてるだけだよ。」
[本当?]
「うん、本当だよ。」
「なぁ、みんな。」
菊丸が6人に呼びかけるとすぐさま返事が返ってきた。
「ああ、本当さ。」
「うん、リョーマ綺麗だよ。」
「すっげぇ、綺麗だぜ!」
「ふしゅ〜////」
「いいデータが取れた。」
「・・・似合っているぞ。」
大石、河村、桃城、海堂、乾とリョーマを誉めたが最後の手塚が言ったとたん、ばっとリョーマが顔をあげ嬉しそうに
微笑んだ。全員ばっちりその顔を見てしまい、顔を赤く染めてしまった、ただ1人手塚だけは顔には出さなかった。そ
して、時間が迫っていることにきずき、手塚の号令により、跡部邸へと急いだ。



途中、菊丸が手塚にこそっと頼まれていたことを報告した。
「手塚、おちびのお父さんはやっぱりあの越前南次郎だったよ。」
「そうか、やはりな。」
「どうするの?あの伝説の海賊越前南次郎の娘だとわかったからリョーマをここに置いて行くの?」
「いや、ここには置いていかない。」
「さっすが手づ・・・」
「しかし、ずっと一緒に航海させるわけにはいかないだろう。女だからな、危険な目にあわせるわけにはいかない。
どこかの町で落ち着いたほうがいいだろう。」
「・・・・・・・・・・でも、それを決めるのはおちびだよ、手塚。」
菊丸は声をワントーン落として言い、前を歩いていた不二とリョーマも元へと行った。その3人の後姿、特にリョーマの
後ろ姿を手塚は見つめていた。





―跡部邸
「よぉ、手塚。遅ぇじゃねぇか。この俺様を待たすとはな。」
「まだ、集合時間の5分前じゃないか。」
「ふん。10分前には来ていて欲しいものだな。・・・ん?その女は誰だ?」
跡部が時間の5分前に来たにも関わらず文句を言っていると不二と菊丸にはさまれて立っているリョーマに気付いて
手塚に尋ねた。
「ああ、彼女は他の海賊によって滅ぼされた村の生き残りだ。」
「へぇ。で、そのまま船に乗せているということか。で、何てぇ名前なんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「おい、俺様が名前を聞いてんだ!名を名乗れ!」
「跡部、この子はしゃべれないんだ。」
跡部が何もしゃべらないリョーマに対していらだったように行ったとき隣にいた不二が跡部に説明をした。
「はっ?!」
「とても辛いことがあってしゃべれなくなってしまったんだ。この子の名前はリョーマ、越前リョーマだよ。」
「越前・・・?」
「跡部、そのことは後で説明する。ところで、お前は読唇術が使えたな。リョーマ、あいさつを。」
手塚に促されリョーマは跡部の前へ行き簡単にあいさつをした。
[あの、はじめまして。越前リョーマです。]
そう言って、少し頭を下げた。
「俺は跡部景吾だ。彪廷(ひょうてい)の船長をしている。」
2人があいさつを終えると征鷽(せいがく)の全員と跡部は屋敷の奥へと入っていった。
そこはメインホールとなっていて、天井にはシャンデリアがいくつもあり、中央には階段が左右から中央に向かって作
られていて、ホールの端にはちょっとしたベランダがあった。今回は集まりということで人が大勢いるため立食になっ
ていた。




そこには彪廷(ひょうてい)の船員らしき人たちがすでに食事をはじめていた。